ラウンジセミナー「大野木工の魅力 ~つくり手から使い手へ、使い手からつくり手へ~」を開催しました
5月10日(火)と11日(水)の10:30~12:00で、現在アートスペースで開催している企画展「里もの -東北の風土とモノづくり-」の関連企画として標記セミナーを開催いたしました。当初、一日で企画しておりましたが、参加希望者が多かったため、増設して2日間で対応しております。
講師には、大野木工生産グループの関向 廣志氏と中家 正一氏、生活デザイナー デザインハウスWASABI 代表 佐藤 和子氏の3名にご対応いただきました。関向氏と中家氏からは大野木工のこれまでの歩みと「つくり手側」のお話を、佐藤氏からは工芸品を「使い手側」へ届けるためのデザイン効果のお話をいただきました。
1980年頃より岩手県大野村(現洋野町)では、元東北工業大学教授の秋岡芳夫氏が提唱された「一人一芸の村づくり」によって、地域資源を活用した木工によるモノづくりが始まり、現在まで受け継がれてきました。木製の給食食器を作り始めた頃より、全国的に注目されるようになったそうです。現在では、出前講座による子どもたちの食育教育にも積極的に取り組まれていることが紹介されました。実際に木を削るところを見学させたり、カンナくずの香りを嗅がせたりして、木に新たに食器としての役目が与えられたことを理解させると、食べ物に感謝していただくことや丁寧に食器を扱うことが自然と身に付くのだそうです。
大野木工の食器は、塗料のはげた部分の再塗布や欠けた部分の補修等も行われています。食器の裏の部分に各木工所の責任マークが入っており、そこで修理をしてくれるようになっています。ちなみにマークには、「三本木さん→三本の木のマーク」「元大工さん→かんなのマーク」等と親しみやすさが感じられる工夫がされています。木の器は、陶器やガラスのように均一の厚さで作ると「反り」が出てしまうため、底をしっかりさせるために厚くしていることも、実際の器を見ながら教えていただきました。
その手触りの優しさに「つくり手」の想いが重なっているように感じられました。
現在展示されている大野木工の作品には、幼児用の給食食器も含まれていますが、そのかわいらしいサイズは見ているだけで心が和みます。
かつては、地域のコミュニティ生産方式として、木工による器作りのそれぞれの工程が分業化されて(鍛冶屋、木こり、製材、ろくろ師、塗師、問屋、小売など)暮らしが成り立っていましたが、現代ではそのコミュニティが消えつつあるため、そうした部分をカバーしながら、暮らしに必要な道具を自分達で作り、使う地域づくりを維持していらっしゃると教えていただきました。
大野木工生産グループの方々が、実直に木の器作りに向き合っている姿勢が伝わってくるようなセミナーでした。町のほとんどが森林である洋野町では、大野木工様が主催した「親子で山を体験する」企画も定期的に開催されているそうです。
生活デザイナーの佐藤氏からは、いかに現代の暮らしの中で伝統工芸品を使ってもらうか、という視点で考えられたデザインをご紹介いただきました。手仕事の技とデザイン性の相乗効果により、新たな販路が開ける実例を教えていただきました。
恒例の軽食タイムには、弊社飲食事業部「一乃庵.」による和食膳メニュー(10日)とサンドイッチメニュー(11日)をご賞味いただきました。
以下はアンケートに寄せられたお客様の声です。
- 今まで瀬戸物を使うことが多かったのですが、木の器を手に取り、温かみと軽さを感じ、もっと自分の生活に取り入れていきたいと思いました。地道な活動に感心しました。
- どちらのお話もとても良くて、雨の中がんばってきて良かったです。生活の事etc・・・色々考えて暮らしたいと感じました。子どもたちにモノの成り立ちを教える事は大切ですね。
- モノづくりを通して、コミュニティを活き活きさせる事は素晴らしく、お話の通り、昔は近くに色々な小さな職人さんがいた時代で、町は人気があり生活感が十分のようでした。なつかしい感じです。コストは安価に流されている自分ですが、本来はバックグラウンドを思うと、正常なコストではないと思いますね。本物の価値はこうあるものなんだと考えさせられました。
- 使う人、作る人の心が伝わってきました。地域資源を利用してのモノづくりは感銘いたしました。ありがとうございます。
- 今日のセミナーを楽しみに参加させていただきました。日常使う器、作者の想い、自然からの恵み、そして手作りの良さを感じながら食卓を囲む、そんな幸せなひと時に感謝しながら過ごしたいと思うこの頃です。大野木工さんから20年ほど前に購入したサラダボールは、とてもいい感じに育って現役で使わせていただいております。
- 「丁寧に作ることは丁寧に生きることにつながる」という言葉が心に残りました。大野木工の方々の思いと重なるのかなとも思いました。感性を磨きながらモノづくりをすることは、使い手自身も感性を磨くことにつながるのではと感じました。素晴らしいお話ありがとうございました。
- アートスペースの展示が素晴らしいと思います。洗練された上質な展示に感動しております。
- 木の器はとても興味がありました。作り手の想いがこもった温かい器を、もっと家に取り入れてみたいと思いました。楽しい講座でした。
ラウンジセミナーは毎週水曜日を基本に生活に役立つ様々なテーマで開催しています。
2016年05月11日